宇城地域
宇城地域は宇土郡と下益城郡の2つの郡で構成されており、宇土市、宇城市(三角町・不知火町・松橋町・豊野町・小川町)、美里町、熊本市南区の城南町・富合町を含みます。


宇城地域の市区町村・中心都市
- 宇土郡
- 宇土市
- 宇城市三角町
- 宇城市不知火町
- 下益城郡
- 宇城市松橋町
- 宇城市豊野町
- 宇城市小川町
- 美里町(中央・砥用)
- 熊本市南区(城南町・富合町)
- 行政の中心:宇城市松橋町(宇城地域振興局所在地)
- 経済の中心:宇土市
- 経済の中心:益城町
- 交通拠点
- 主要駅:宇土駅(宇土市)・松橋駅(宇城市不知火町)
- バス停留所:松橋バスターミナル(宇城市松橋町)
- 高速道路:
- 九州自動車道:松橋IC(宇城市松橋町)・城南SIC(熊本市南区)
- 熊本天草幹線道路:みすみIC(宇城市三角町)
- 港湾:三角港(宇城市三角町)
宇城市

(国土交通省 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスの空中写真を基に作成)
松橋市街地は宇城市の中心市街地であり、宇城市役所本庁舎や主要な行政機関(警察署、労働局、振興局など)が集約されているため、宇城地域における行政の中心地として機能しています。
また、松橋市街地にはJR松橋駅や宇城市不知火支所(旧不知火町役場)も位置しており、交通や行政サービスの面でも利便性が高い地域です。なお、松橋駅の所在地は旧不知火町(現在の宇城市不知火町)にあります。

(国土交通省 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスの空中写真を基に作成)
かつて日本最古の近代港湾のひとつとして発展し、郡役所も置かれていました。天草諸島や島原方面への船が発着する交通の要衝であり、宇土郡内においても中心的な都市として栄えていました。

(国土交通省 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスの空中写真を基に作成)
不知火町松合地区は熊本県宇城市にある歴史ある港町で、江戸〜明治時代に醸造と漁業で栄えました。白壁土蔵が並ぶ街並みが今も残り、観光名所になっています。

(国土交通省 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスの空中写真を基に作成)



熊本県の中部に位置する宇城市は、八代海の海岸線から内陸部の山あいまで多様な地形を持ち、都市と自然、歴史と産業が交錯する地域性豊かな自治体です。2005年、平成の大合併により、旧松橋町・小川町・豊野町(下益城郡)と三角町・不知火町(宇土郡)が合併して誕生したこの都市は、現在約5万4千人の人口を抱え、熊本都市圏の一角としても機能しています。市の名称は、旧来からこの地域が「宇城地区」と呼ばれていたことに由来し、地元住民にも馴染みのある呼び名として定着しています。
宇城市は南北に長く、南は八代郡氷川町、北は熊本市南区と接し、西端の旧三角町地区は天草諸島への玄関口として栄えてきました。とくに三角港のうち、明治期に築港された三角西港は、日本近代化の象徴として世界文化遺産にも登録されており、往時の面影をそのままに残す港町として観光客に人気です。一方、市の中心機能を担うのは内陸部の松橋地区で、国道3号や九州自動車道が縦断し、物流・通勤・教育・行政のすべてが集積した市街地が形成されています。
農業が盛んな地域でもあり、米・野菜・果樹といった基幹作物に加え、有機農業や地域ブランド品の開発も進んでいます。とくに小川町や豊野町エリアでは棚田や清流沿いの田園地帯が広がり、都市に隣接しながらも豊かな農村景観が保たれています。また、三角・不知火地域は温暖な海洋性気候を活かした柑橘栽培の産地としても知られ、熊本の冬の味覚として高い評価を得ています。工業面では、食品・建材・流通業の工場や物流拠点が立地し、農水産物の加工や出荷の拠点としての役割も果たしています。
宇城市はまた、文化・教育・観光においても多様な顔を持ちます。市内には歴史ある神社仏閣が点在し、竹崎季長ゆかりの塔福寺や、白壁土蔵群が並ぶ松合の街並み、三角西港周辺の近代遺産などは、地域の深い歴史を物語っています。さらに、岡岳山や海辺の公園、みすみフラワーアイランドなど自然と触れ合える施設も整備され、家族連れや高齢者も楽しめる観光資源に恵まれています。また、不知火美術館や図書館などの文化施設も市民に開かれており、芸術と学びの拠点として活用されています。
教育面では、県立の高校をはじめ、小中学校も各地区に配置されており、地域の地理的広がりに対応した通学環境が整っています。2006年からは国際理解教育特区として、英会話科や中国語教育、食文化に関する総合学習などを取り入れ、小中9年間を通じた先進的な教育実践も展開されています。また、特別支援学校も3校設置されており、多様な教育ニーズに応える体制が整っています。
交通インフラも充実しており、九州自動車道の松橋ICをはじめ、鉄道はJR鹿児島本線・三角線が市内を走り、松橋駅や三角駅、小川駅などが主要なターミナルとして利用されています。さらに、三角港からは天草諸島への航路も運行されており、陸・海の交通が融合する地域的特性を有しています。高速バス路線も複数あり、福岡・熊本市内・延岡方面と結ぶ広域交通も発達しています。
宇城市は、自然・歴史・産業が混在する多様性に富んだ自治体でありながら、それぞれの地域が持つ個性を尊重しながら全体として調和のとれた発展を遂げています。都市圏の利便性と田園・港町の落ち着きが共存するこのまちは、居住、就業、観光、教育、すべての分野でバランスの取れた魅力を持ち、今後も熊本県南部の中核都市として、地域と都市をつなぐ架け橋のような役割を果たしていくことでしょう。
宇土市

(国土交通省 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスの空中写真を基に作成)


熊本県の中央部、宇土半島の付け根に位置する宇土市は、有明海に面した美しい自然と深い歴史を併せ持つ町であり、古くは武将たちの支配をめぐる城下町として、また近代以降は商工業の拠点として発展してきた地域です。面積はおよそ74平方キロメートル、人口は約3万5千人(2025年4月時点推計)と、県内の中規模都市の一つでありながら、歴史・産業・自然の豊かさを背景にした多面的な魅力を持っています。西には日本の渚百選にも選ばれた御輿来海岸が広がり、潮が引くと海床路が現れる幻想的な景観は、県内屈指の夕景スポットとして知られています。
宇土の地名は古代から記録に残されており、その語源には「浮土」や「谷あいの地」を意味する説があるといわれます。中世には宇土城が築かれ、名和氏や小西行長、加藤清正といった名だたる武将がその地を治めました。特にキリシタン大名として知られる小西行長の治世では、港湾と城下町が一体となった都市づくりが進みましたが、関ヶ原の戦い後に行長が処刑されると、その地は加藤家、細川家と受け継がれ、江戸期には宇土支藩が置かれました。灌漑と飲用水の整備として名高い「轟上水道」は、この時代に整備されたものであり、今なお市の歴史遺産として大切にされています。
産業面では、温暖な気候と豊かな水資源を活かした農業が盛んで、ネーブルやデコポンといった柑橘類、アンデスメロンなどの果実は地元を代表する特産品となっています。また、有明海沿岸ではのりやアサリの養殖も行われており、農水産物の両面で高い生産力を誇っています。製造業としては食料加工や化学、金属加工などの工場が立地し、近年では海藻製品や医薬原料、包装資材などの分野でも地場企業の存在感が高まっています。伝統的な特産品としては張り子細工や「うと餅」「小袖餅」などの銘菓があり、地域の文化と味を伝えています。
交通の利便性も宇土市の大きな特徴です。JR鹿児島本線・三角線の宇土駅を中心に、市内を複数の路線が結び、熊本市や宇城市、天草方面との広域連携が可能です。また、国道3号や57号などの幹線道路も市内を通り、陸上交通の要所としての役割を果たしています。さらに、「道の駅宇土マリーナ」や海辺の観光施設が点在し、観光客を迎える地域資源として整備が進められています。近年は、JR宇土駅や宇土市役所の周辺に生活機能や商業施設が集まり、バス路線・公共施設・教育機関がまとまったコンパクトな都市空間が形成されています。
教育分野では、小学校・中学校のほか、県立の宇土高等学校が設置されており、地域の教育の中核を担っています。市内全小学校で制服が導入されている点も特徴的で、子どもたちの地域に対する一体感が育まれる環境が整っています。また、文化活動も盛んで、地元の祭りや地域芸能の継承も行われています。粟嶋神社大祭や地蔵まつり、大太鼓フェスティバルなど、四季折々の行事は地域住民にとっての大切な年中行事となっており、地元の誇りとして代々受け継がれています。
2016年の熊本地震では市役所庁舎が被災し、長期間の仮庁舎運営を経て、2023年に新庁舎が完成しました。この経験は、災害に強いまちづくりへの意識を高め、行政機能の再構築だけでなく、地域防災意識の醸成にもつながっています。
宇土市は、熊本都市圏と天草・八代を結ぶ地理的な中継点にあり、都市の利便性と自然の美しさ、そして歴史的重みが融合した町です。日常の暮らしやすさを保ちつつ、観光、産業、教育など多様な面で発展を続けており、今後も県内外からの交流を受け入れる玄関口としての役割を担いながら、穏やかで豊かなまちづくりを続けていくことでしょう。
美里町

(国土交通省 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスの空中写真を基に作成)

(国土交通省 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスの空中写真を基に作成)

(国土交通省 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスの空中写真を基に作成)
熊本県の中央部に位置する美里町は、雄大な九州山地の一角を占める山林と、緑川をはじめとする清流に恵まれた自然豊かなまちであり、町の約8割を山林が占める典型的な中山間地域です。旧中央町と旧砥用町が2004年に合併して誕生したこの町は、現在の町域全体で144平方キロメートルに及び、人口は約8,100人(2025年4月時点推計)と小規模ながらも、石橋や神社仏閣、清水や渓谷など、古くから受け継がれてきた景観資産と生活文化が今も色濃く息づいています。
町の北部は熊本盆地に接する平坦地で、比較的開けた集落と農地が広がる一方、南部には標高1,000メートル級の山々が連なり、急峻な谷間に小さな集落が点在する独特の地形を持っています。この山深い地に沿って流れる緑川と釈迦院川は、町民の暮らしを支える水源であると同時に、歴史と風土の中心でもあります。町の象徴として広く知られるのが、江戸時代に築かれたアーチ型石橋「霊台橋」であり、美しい石組みが今もなお現役で使われている点から、地域の誇りとして大切にされています。また、この町には全国的にも珍しい「日本一の石段」として知られる釈迦院の参道があり、その3,333段の石段を目当てに訪れる登山客や観光客も後を絶ちません。
かつては木材生産や製炭業、養蚕などが盛んであったこの町も、時代とともに産業構造が変化し、現在は小規模ながらも多様な農業が基盤となっています。段々畑での野菜や米の栽培、果樹や山菜などの特産品が地元直売所に並び、訪れる人々に里山の恵みを提供しています。2024年には町の合併20周年を記念し、町民からの想いを込めた町歌「美しい里 美里町」が制定され、住民一人ひとりの地域への誇りと愛着が形として結実しました。
教育環境も地域に根差したものとなっており、町内には中学校2校、小学校3校があり、通学の利便性や地元への定着を重視した学校運営が行われています。高群逸枝がかつて教鞭をとったという歴史を持つ砥用小学校や、複数の小学校を統合して設置された中央小学校など、いずれの校舎も地域の記憶とともに歩んできた学び舎です。
交通インフラに関しては、町内に鉄道は通っておらず、自家用車やバス交通が移動の中心となっています。最寄りのJR駅は宇城市の松橋駅であり、町内では熊本バスや産交バス、麻生交通、町営の美里バスが運行されており、熊本市や宇城市、甲佐町、山都町など近隣市町との交通を担っています。また、国道218号・443号・445号のほか、複数の県道が町内を縦横に走り、山間部でありながらも比較的良好な道路網が整備されています。
祭事や行事も多く、新年を告げる霊台橋マラソン、春の若宮神社や穂積阿蘇神社の例祭、秋の棚田と石橋をめぐるハイキングなど、四季を通じて地域の自然と歴史を体感できる催しが住民の手で継続されています。とくに「石橋のまち」としてのブランディングは町の観光資源として注力されており、霊台橋をはじめとする30以上の石橋群は全国からの石橋愛好家の関心を集めています。
美里町は、高齢化や人口減少といった全国の中山間地域が抱える課題と向き合いつつも、地域資源を磨き直し、生活の質と誇りを守り抜こうとする意志に満ちた町です。自然の中に暮らし、歴史を継承しながら、新しい交流や地域づくりに取り組むこの町は、都市とは異なる豊かさの象徴として、多くの人にとっての「もう一つのふるさと」となりうる可能性を秘めています。
熊本市南区

(国土交通省 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスの空中写真を基に作成)

(国土交通省 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスの空中写真を基に作成)

(国土交通省 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスの空中写真を基に作成)
熊本市南区は、熊本市の最南端に位置する行政区であり、市内では二番目に広い面積を持ち、豊かな自然と交通の利便性をあわせ持つ地域です。面積は約110平方キロメートル、人口は約13万人(2025年4月時点推計)と中規模の都市区ながら、農業地帯、住宅地、工業団地、漁業港、そして伝統的町並みが混在する、非常に多様な顔を持った地域となっています。かつては川尻町・富合町・城南町・飽田町・天明町など複数の町村に分かれていたこの地域は、昭和から平成にかけて段階的に熊本市へ編入され、2012年の政令指定都市移行とともに「南区」として行政区化されました。
熊本市中心部から車で20分程度と市街地に近接していながらも、南区には緑川と加勢川が流れ、有明海に面した干潟や田園風景が今なお広がっています。特に飽田や天明地区は、熊本でも有数の米・野菜・果物の生産地であり、都市農業と直売文化が根強く残る地域です。一方、富合町や城南町では、近年では物流施設や住宅団地の開発が進み、都市機能と自然が調和した新たなまちづくりが展開されています。区内の各所には旧村時代の地名や神社仏閣が数多く残り、地域ごとの個性と歴史を大切にしながらも、全体としてひとつの「南の顔」を形づくっているのが特徴です。
交通インフラに恵まれたこの地域は、JR鹿児島本線の西熊本・川尻・富合駅をはじめ、国道3号や国道57号といった幹線道路、九州自動車道のインターチェンジ、さらには城南バスストップなどが整備されており、熊本市の「南の玄関口」としても重要な役割を担っています。加えて、南区の一部地域は有明海に面し、対岸の長崎県島原市とも海上で向かい合っている地理的特性から、かつては交通と交流の海の拠点として栄えた歴史もあります。
教育機関も充実しており、公立の小学校・中学校に加え、熊本農業高校が立地しており、農業教育や地域連携の拠点にもなっています。教育の場では、地域と連携した体験学習や、地元の伝統文化に触れる取り組みも多く行われており、学びと地域が密接につながっていることが南区の教育の特徴です。また、平成さくら支援学校など、特別支援教育の体制も整備されており、誰もが安心して暮らせるまちづくりに貢献しています。
文化・観光資源としては、塚原古墳群や木原不動尊、大慈禅寺などの史跡・寺社仏閣があり、かつての川尻町には職人文化が色濃く残る伝統工芸の町並みが残されています。毎年開催される「川尻精霊流し」などの行事や、下田のイチョウなどの自然名所もまた、市民や観光客にとっての癒やしの場所となっています。また、近年では物流拠点としての整備や、大型商業施設、工業団地の立地などによって経済的な機能も高まりつつあり、住みやすさと働きやすさを兼ね備えた都市区として存在感を増しています。
南区は、その成り立ちや文化的背景から、熊本市内でも特に多様性と地元愛が共存する地域です。かつての農村的風景を守りながらも、熊本市南部の経済と人口の要所として成長を遂げており、今後も都市と田園が共存する「南のまち」として、暮らしの質を高めながら進化し続けていくことが期待されています。
宇城地域のフルーツ
宇城地域は温暖な気候を活かした果物栽培が盛んで、特にデコポンが有名です。デコポンは高糖度で、ブランド柑橘として知られています。ほかにも、甘くて瑞々しいメロンや色鮮やかで甘味の強いミニトマト、香り豊かなマンゴー、イチジクなど、多種多様な農産品が地域の特産物として親しまれています。
- 温州みかん
- デコポン
- 肥後グリーンメロン
- アールスメロン
- パール柑