その他かんきつ

その他かんきつの統計

集落・地区との経営体数(2020年)の列は、農林業センサス 第1巻 都道府県別統計書(熊本県)農業経営体 -農林水産省を参照。栽培品種は弊社の独自調査(現地調査・インターネット等)。

集落・地区経営体数(2020年)栽培品種
①田浦町(葦北郡芦北町)
※田浦町・田浦・海浦・横居木・波多島・井牟田
197不知火・甘夏・スイートスプリング・はるか・レモン
②小天村(玉名市天水町)115不知火・河内晩柑・甘夏・八朔・ポンカン・パール柑・スイートスプリング・はるか・レモン
③大岳村(宇城市三角町)
※里浦・手場・大口
98不知火・パール柑・はるか・スイートスプリング・レモン
④河内村(熊本市西区河内町)
※河内・白浜・船津
96不知火・河内晩柑・甘夏・八朔・ポンカン・パール柑・スイートスプリング・はるか・レモン
⑤水俣(水俣市)
※旧久木野村(久木野・大川・越小場・古里)を除く
※石坂川・市渡瀬・江添・大迫・葛渡・小津奈木・陳内・薄原・月浦・中鶴・長崎・長野・南福寺・初野・浜・深川・袋・宝川内・湯出・旭町・桜井町・昭和町・大黒町・天神町・百間町・港町・洗切町・梅戸町・江南町・大園町・古賀町・幸町・栄町・塩浜町・多々良町・築地・中央公園・野口町・八幡町・浜町・浜松町・ひばりヶ丘・平町・緑ヶ丘・山手町・浦上町・祇園町・汐見町・八ノ窪町・丸島町・明神町・古城・桜ヶ丘・白浜町・陣内・長野町・南福寺・牧ノ内・わらび野
91不知火・河内晩柑・甘夏・八朔・ポンカン・パール柑・スイートスプリング・はるか・レモン
⑥湯浦町(葦北郡芦北町)
※湯浦・女島・丸山・米田・豊岡・大川内・高岡・古石・宮崎
64不知火・甘夏
⑦深海村(天草市・旧牛深市)
※天草市深海町
63不知火・河内晩柑・ポンカン
⑧三角(宇城市三角町)
※三角浦・波多・大田尾
56不知火・パール柑・ポンカン・レモン
⑨不知火村(宇城市不知火町)
※浦上・柏原・亀松・高良・小曽部・御領・長崎
51不知火
⑩吉野村(八代郡氷川町・旧竜北町)
※吉本・大野・高塚・新田
36晩白柚・不知火

熊本県北部の金峰山周辺と宇土半島などの、温州みかんの三大産地の河内(熊本市西区)・天水(玉名市)・三角(宇城市)にその他柑橘も経営体数が多い生産地があるが、県南部の芦北地方にも経営体数が多い生産地が多いのが特徴である。温州みかんと同様に温暖な沿岸気候と水はけの良い傾斜地条件が重要であることが分かる。

不知火(しらぬひ・しらぬい)

不知火5kg(熊本県産)(左上)
不知火5kg(熊本県産)(左下)
不知火5kg(熊本県産)(右上)
不知火5kg(熊本県産)(右下)
葉付き不知火3kg(熊本県産)(上)
葉付き不知火3kg(宇土市産)(右下)
葉付き不知火3kg(宇土市産)(左下)
山下果樹園こだわりのみかん(不知火)10kg(天草郡苓北町産)(左上)
デコ・オレンジ(不知火)(訳あり)10kg(天草市・上天草市・苓北町産)(左下)
フレッシュフルーツ(不知火)10kg(天草市河浦町産)(右下)
熊本県産不知火(贈答用)(人吉市産)(左上)
葉付き不知火5kg(贈答用)(宇土市産)(右上)
葉付き不知火2kg(贈答用)(宇土市産)(左下)
不知火2kg(贈答用)(熊本県産)(右下)
不知火(熊本県産)(5kg)(右上)
不知火(熊本県産)(5kg)(左中央)
不知火(熊本県産)(5kg)(右下)

不知火(しらぬひ)は、「清見」と「ポンカン」から生まれた品種名であり、その濃厚な甘さと手軽さから中晩柑(年明けの1月から5月頃にかけて収穫・出荷される、温州(うんしゅう)みかん以外の柑橘類の総称)の主力品種へと成長しました。現在市場で目にする「デコポン」「デコオレンジ」「デコみかん」といった名称は、同じ不知火系統に由来しながらも、法的な位置づけと品質管理の仕組みが異なります。

「デコポン」は登録商標であり、糖度13度以上・酸度1度以下という基準を満たし、指定団体の流通ルートを通ったもののみが使用できるブランド名です。品質保証と団体管理が前提となるため、ブランドとしての信頼性が担保されています。

一方、「デコオレンジ」や「デコみかん」は商標ではなく、一般流通で用いられる販売名称です。不知火という品種名が消費者に浸透しにくいことや、「デコポン」という商標を使用できない事情から生まれた呼称であり、品質基準は統一されていません。

20年ほど前、デコポンブランドが確立していく過程では、「テコポン」(“デ”の濁点を外した表記)など、商標に近い名称が一部で使用されるケースも見られました。しかし、その後商標管理や表示基準の運用が明確化されるにつれ、こうした紛らわしい名称は次第に市場から姿を消していきました。現在では、名称の整理が進み、表示の適正化が図られています。これはブランド価値を守る取り組みが定着した結果であり、流通の透明性向上という側面も持っています。

写真のように、上は不知火(デコオレンジ)として流通する箱、下はJA正規のデコポン箱(画像はJAたまな)です。このようにデザインが似ているケースもあるため、商標表示や出荷団体表示の有無を確認することが重要になります。同じ不知火系であっても、品種名・商標・販売名称は明確に区別されます。名称の取り扱いを正確に行うことは、流通の透明性を保ち、ブランド価値を守るうえで欠かせない要素です。

また、「肥の豊」はM16(通常の不知火)を種子親に、「マーコット」を花粉親として交配育成された改良系統で、樹勢が強く減酸が早いという特性を備えています。マーコットは甘味が強く成熟が比較的早いタンゴール系品種として知られており、その影響により、肥の豊はM16と比較して酸の抜けが比較的早く、甘味が前面に出やすい傾向があります。そのため、実際の販売現場では「甘いものが多い」とお客様から好評をいただくことも少なくありません。

外観は不知火と大きく変わらず、果頂部の隆起も見られるため流通上は不知火系として扱われることが多いものの、品種登録上は不知火とは別に登録されています。一方で、JAの商標運用上はデコポンの対象品種に含まれており、一定の制度的枠組みの中で取り扱われています。ただし、デコポン表示が可能となるのは、指定団体(JA)の管理下で選果され、糖度13度以上・酸度1度以下などの品質基準を満たした場合に限られます。したがって、品種名と商標名は制度上明確に区別されており、その違いを正しく理解することが重要です。

肥の豊(熊本県産)

デコポン

デコポン5kg・JAやつしろ(八代市・氷川町産)(右上)
デコポン5kg・JAたまな(荒尾市・玉名市・玉名郡産)(左)
デコポン5kg・JAあしきた・マルタ選果場(水俣市・葦北郡産)(右下)

デコポンはJA熊本果実連が所有する登録商標です。JAに出荷される「不知火(M16・肥の豊)」のうち、高品質を保つ一定の基準(糖度13度以上・酸度1%以下)という厳しい基準をクリアしたものだけがデコポンとなります。

参照:デコポン®(しらぬい)(柑橘)|JAPAN FRUIT ROAD 日本くだもの農協
 https://kudamono-noukyo.com/kankitsu/kankitsu08.html

晩白柚(ばんぺいゆ)

ハウス栽培・晩白柚2Lサイズ5玉入り・JAやつしろ・八代果実選果場(八代市産)(右上)
ハウス栽培・晩白柚2Lサイズ5玉入り・JAやつしろ・八代果実選果場(八代市産)(左)
露地栽培・晩白柚Lサイズ6玉入り・JAやつしろ・八代果実選果場(八代市産)(右下)
露地栽培・晩白柚Lサイズ3玉入り(秀品)・JAやつしろ・果実八代選果場(八代市産)(上)
ハウス栽培・晩白柚Lサイズ2玉入り(秀品)・JAやつしろ・八代果実選果場(八代市産)(左下)
晩白柚Lサイズ2玉入り・JAやつしろ・吉野果実選果場(氷川町産)(右下)
葉付きの晩白柚(12月下旬)(八代市産)
晩白柚3Lサイズ4玉入・JAやつしろ・八代果実選果場(八代市産)(左上)
晩白柚3Lサイズ2玉入(八代市産)(左下)
晩白柚3Lサイズ4玉入(八代市産)(右)

晩白柚は、ザボン類に属する世界最大級の柑橘であり、その堂々たる大きさと上品な味わいから、熊本県八代地域を代表する冬の銘果として広く知られています。一般的な温州みかんとは比較にならない重量感を持ち、Mサイズでも約1kg、Lサイズで約1.5kg、2Lサイズでは約2kg、3Lサイズになると約2.5kgにも達します。箱詰めでは、Mサイズ6玉で約6kg、Lサイズ6玉で約9kg、2Lサイズは5玉で約10kg、3Lサイズは4玉で約10kgという規格で流通しており、まさに“柑橘の王様”と呼ぶにふさわしい存在感を備えています。

3Lサイズは特に迫力があり、専用箱でも収まりに余裕がないほどの大きさです。しかし晩白柚は厚い果皮に守られ非常に堅牢であるため、この状態での輸送にも問題はありません。外観の堂々さと実用性を兼ね備えた希有な大型柑橘です。

八代市および八代郡氷川町を集荷範囲とするJAやつしろの「八代特産晩白柚」は、地理的表示(GI)保護制度に登録されています。正規品にはGIマークのシールが貼付され、産地と品質が公的に保証されています。これは単なるブランド表示ではなく、地域の栽培技術と歴史を裏付ける制度であり、八代ブランドを象徴する重要な証です。

晩白柚は12月下旬になると、正月飾り用として葉付きのものが流通し始めます。八代市や氷川町では、正月に晩白柚を飾る風習が今も一部に残っており、熊本県出身の政治家や経済人の間でも事務所に飾られるなど、地域を象徴する存在として認識されています。単なる果実を超え、歳時と結びついた文化的果実といえます。

八代果実選果場(八代市)では、露地栽培のものは茶色い段ボールに晩白柚の形を模した緑色のシール、ハウス栽培のものは白い段ボールに晩白柚の形を模した赤茶色のシールが貼付され、作型ごとに明確に区別されています。一方、吉野果実選果場(氷川町)では、露地栽培は茶色い段ボール、ハウス栽培は白い段ボールという区分は同様ですが、いずれも楕円形のくまモンのシールが貼られています。このように、箱色やシールの違いによって栽培方法や選果場を判別できる仕組みが整えられており、表示の明確化は産地ブランドを守ると同時に、品質への信頼を支える重要な要素となっています。

果肉は淡い乳白色でみずみずしく、文旦類特有の爽やかな香りと穏やかな甘み、軽やかな酸味が調和した上品な味わいを持ちます。房はしっかりとした食感があり、後味はすっきりとしています。厚い果皮は砂糖漬けにして「ザボン漬」として楽しむことができるほか、皮を乾燥させて湯に浮かべれば柑橘特有の芳香が広がり、冬の風呂を豊かに彩ります。果実全体を余すことなく活かせる点も、晩白柚の魅力のひとつです。

日本フルーツ株式会社では、この圧倒的な大きさそのものを楽しんでいただきたいという考えから、Lサイズ以上のみを取り扱っています。晩白柚は単なる果実ではなく、箱を開けた瞬間の驚きや、家族で分け合う時間までも含めて価値を持つ柑橘です。その存在感、香り、そして余韻までを存分に味わえる一玉をお届けしています。

八朔(はっさく)

紅八朔10kg・2Lサイズ(熊本県産)(左)
紅八朔10kg・Mサイズ(熊本県産)(右)

八朔(はっさく)は、しっかりとした果肉と爽やかな甘酸っぱさ、そしてほのかな苦味をあわせ持つ中晩柑です。外皮はやや厚く、淡い黄色に色づき、果肉はぷりっとした弾力があり、房ごとの食感が際立ちます。甘さ一辺倒ではなく、柑橘らしい酸味と軽いほろ苦さが調和する味わいは、食後にすっきりとした余韻を残します。

熊本県では、温州みかんの名産地として知られる熊本市西区河内町や玉名市天水町を中心に栽培されてきました。有明海を望む斜面は日照に恵まれ、水はけも良く、温州みかんと同様の立地条件のもとで八朔も育てられ、冬から春にかけて出荷されています。

八朔には枝変わり品種である「紅八朔」も存在します。紅八朔は果皮の色づきがより濃く鮮やかで、外観品質に優れた系統です。基本的な風味は八朔と共通しながらも、ややまろやかに感じられることもあり、従来の味わいを保ちながら商品性を高めた品種といえます。

近年は、同じ中晩柑でも甘みが強く食べやすい「スイートスプリング」への改植が進み、八朔の生産者は徐々に減少しています。消費者の嗜好や市場動向の変化を背景に、高糖度で剥きやすい品種が主流となりつつあるためです。それでも、スイートスプリングもまた八朔の血を引く品種であり、八朔の特性は次世代品種へと確かに受け継がれています。

爽快な酸味とほどよい苦味、そして引き締まった食感。甘さだけでは語れない味わいを持つ八朔と紅八朔は、温州みかん産地の歴史の中で育まれてきた、熊本を代表する伝統的な中晩柑といえるでしょう。

スイートスプリング

スイートスプリング10kg(熊本県産)(左上)
スイートスプリング10kg(熊本県産)(2026/1/29撮影)(右上)
山田青果卸売市場・スイートスプリング10kg(熊本県産)(2026/1/29撮影)(左下)
スイートスプリング5kg(熊本県産)(右下)
スイートスプリング(熊本県産)(2024/12/8撮影)(右上)
スイートスプリング(熊本県産)(2024/12/8撮影)((左)
スイートスプリング(熊本県産)(2025/11/18撮影)(右下)
スイートスプリング5kg(熊本県産)(2026/3/5 撮影)

スイートスプリングは、八朔と温州みかんの交配によって生まれた中晩柑です。八朔由来の爽やかな風味を受け継ぎながら、温州みかんの甘さと食べやすさをあわせ持つ品種として誕生しました。果皮はやや厚みがあり、外観は淡い黄色から黄緑色を帯びることもありますが、果肉はみずみずしく、酸味が穏やかで、名前のとおり“春を感じさせる”軽やかな甘さが特徴です。

11月から12月頃はまだ緑がかった色合いが残りますが、見た目に反して甘味は十分に乗っており、そのギャップに驚かされます。1月頃から徐々に黄色味が増し、熟度の進みとともに外観も春らしい印象へと変わっていきます。

熊本県では、温州みかん産地として知られる熊本市西区河内町や玉名市天水町などで栽培が広がっています。有明海を望む南向き斜面の園地は日照に恵まれ、水はけも良く、柑橘栽培に適した環境が整っています。こうした立地条件のもと、従来の中晩柑に代わる新しい品種として導入が進み、現在では地域を代表する春先の柑橘のひとつとなっています。

スイートスプリングは八朔の血を引きながらも、味わいはよりまろやかで食べやすく仕上がっています。酸味が強く出にくく、糖度も安定しやすいため、収穫後比較的早い段階から食味が整います。房はしっかりしていながら苦味は穏やかで、柑橘らしい清涼感を残しつつも、幅広い世代に受け入れられやすい味わいです。

冬から春へと季節が移ろう時期に出荷されるスイートスプリングは、温州みかんの後を継ぐ“橋渡しの柑橘”ともいえます。八朔の系譜を受け継ぎながら、時代の嗜好に合わせて進化した、熊本を代表する新しい中晩柑の主力品種です。

パール柑

ラップ付パール柑10kg(宇城市三角町産)(左上)
パール柑10kg(宇城市三角町産)(右上)
パール柑10kg・小川柑橘組合・JA熊本うき(宇城市小川町産)(中央左)
ラップ付パール柑5kg(宇城市三角町産)(中央右)
ラップ付パール柑5kg(宇城市三角町産)(左下)
パール柑5kg(宇城市三角町産)(右下)
パール柑(熊本県産)(左上)
パール柑(熊本県産)(右上)
パール柑(熊本県産)(右下)

パール柑は、正式な品種名を「大橘(おおたちばな)」という文旦(ぶんたん)系の柑橘です。

熊本県では、果肉が白く輝く美しさと、天草パールライン沿線での栽培が多いことから「パール柑」と呼ばれています。とくに天草パールライン(天草五橋)沿線――宇城市三角町から上天草市松島町合津にかけての地域での栽培が盛んで、名称の由来ともなっています。現在では沿線地域に限らず、宇城市小川町、天草市本渡、玉名市天水、熊本市西区河内町、水俣市などでも栽培されています。

同じ大橘という品種でも、熊本では「パール柑」、鹿児島では「サワーポメロ」としてブランド化されています。一方、その他の地域で栽培されるものは「文旦」として流通することも多く、地域ごとに名称が異なります。

果皮はやや厚く、淡い黄色に色づきます。包丁を入れると、透き通るような乳白色の果肉が現れ、房はしっかりとした弾力を持ちながらもみずみずしく、噛むほどに爽やかな甘みと穏やかな酸味が広がります。文旦特有のほろ苦さは控えめで、すっきりとした後味が特徴です。甘さのみを強調する柑橘とは異なり、気品ある味わいを楽しめます。

天草地方や宇土半島周辺は、温暖な気候と海に面した南向き斜面という恵まれた条件を備えています。豊かな日照と潮風に育まれた果実は、香りが高く、上質な仕上がりとなります。冬から春にかけて出荷され、贈答用としても高い人気を誇ります。

厚い果皮は砂糖漬けやピールにも利用でき、果実全体を余すことなく活用できます。見た目の美しさと上品な味わいを兼ね備えたパール柑は、熊本を代表する文旦系柑橘のひとつです。

河内晩柑(ジューシーオレンジ)

晩柑オレンジ(河内晩柑)10kg(熊本県産)(左上)
天草晩柑(河内晩柑)10kg(天草市・上天草市・苓北町産)(右上)
河内晩柑10kg(熊本県産)(中央)
ジューシーオレンジ(河内晩柑)10kg(天草市・上天草市・苓北町産)(左下)
くまもと中晩柑(河内晩柑)10kg(熊本県産)(右下)

河内晩柑(かわちばんかん)は、文旦系に分類される晩柑類のひとつで、さっぱりとした甘さとみずみずしい果汁が特徴の柑橘です。見た目はグレープフルーツに似ていますが、苦味はほとんどなく、酸味も穏やかで、すっきりとした後味が魅力です。果肉はやわらかく、果汁が豊富で、春から初夏にかけて爽快感を楽しめる品種として親しまれています。

名称の「河内」は、発見地である熊本市西区河内町に由来します。偶発実生として見出され、その後各地に広まりました。熊本県内では河内町をはじめ、玉名市天水町、天草市、水俣市などで栽培が行われてきました。

現在は愛媛県など他県での生産量も多く、全国的に流通しています。地域によってブランド名称が異なり、熊本県では「ジューシーオレンジ」や「晩柑オレンジ」、天草地域(天草市・上天草市・苓北町)では「天草晩柑」として販売されることがあります。愛媛県愛南町では「美生柑(みしょうかん)」や「愛南ゴールド」、宇和島市では「宇和ゴールド」といった名称でも流通していますが、いずれも同一品種です。発見地である河内町以外にも栽培が広がったことで、各地域で独自のブランド名が付けられるようになりました。

果皮はやや厚みがありますが比較的むきやすく、果肉は淡い黄色でやわらかな食感を持ちます。収穫後も樹上で長期間保持できる特性があり、出荷期間が長いことも大きな特徴です。酸味は穏やかで、文旦系特有の苦味が少ないため、幅広い世代に食べやすい味わいとなっています。

甘夏(あまなつ)

甘夏(熊本県産)(左上)
甘夏(熊本県産)(右上)
甘夏(芦北町田浦産)(左下)
甘夏(熊本県産)(右上)
紅甘夏(熊本県産)(上)
紅甘夏(熊本県産)(下)

甘夏(あまなつ)は、爽やかな酸味とほどよい苦味をあわせ持つ中晩柑で、熊本県南部・芦北地域を代表する伝統的な柑橘です。厚みのある果皮と、しっかりと締まった果肉が特徴で、口に含むと爽やかな甘酸っぱさと清涼感が広がります。甘さだけでなく、柑橘本来の風味を楽しめる品種として長年親しまれてきました。

甘夏の正式名称はカワノナツダイダイ(川野夏橙)であり、ナツダイダイ(いわゆる夏みかん)の枝変わり種とされています。ナツダイダイに比べて減酸が早く、酸味がやわらかいことが特徴です。現在ではナツダイダイの栽培は非常に少なくなっており、一般的には甘夏のことを「夏みかん」と呼ぶことも多くなっています。

甘夏には、果皮と果肉がやや赤みを帯びる「紅甘夏(べにあまなつ)」という系統も存在します。紅甘夏は甘夏の枝変わりによって生まれたもので、基本的な食味や性質は甘夏とほぼ同じですが、果皮と果肉の色がやや濃く、見た目に華やかさがあります。味わいは甘夏と同様に爽やかな酸味とほのかな苦味があり、春柑橘らしい清涼感を楽しむことができます。芦北地域でも一定数が栽培され、甘夏の一系統として受け継がれています。

芦北町・津奈木町・水俣市に広がる不知火海(八代海)沿岸の温暖な斜面地は、甘夏栽培に適した環境を備えています。日照に恵まれ、水はけの良い園地で育つ甘夏は品質が高く、県南地域の柑橘栽培の発展を支えてきました。

芦北地域は、歴史的には芦北町佐敷を中心とした政治・行政の拠点として発展してきました。佐敷には中世の佐敷城が築かれ、明治には葦北郡役所、現在では芦北地域振興局が置かれるなど、地域統治の中心地としての役割を担ってきました。一方、近代以降は水俣市が経済の中心都市として発展し、工業や商業の拠点となって地域経済を支えてきました。

こうした地域の中で、芦北地域では海の汚染により、かつて沿岸の漁業が大きな影響を受けた時期があり、その後、海に代わる地域産業として柑橘栽培が広がっていきました。甘夏はその中心となる作物として発展し、県南地域の柑橘産地形成を支える重要な役割を果たしました。

昭和30年代には全国的に集団栽培が進み、甘夏は温州みかんに次ぐ主要柑橘のひとつとして広く栽培されるようになります。芦北地域でも多くの園地が開かれ、県南柑橘の基幹品種として産地の発展を支えてきました。

しかし、昭和46年のグレープフルーツ輸入自由化をはじめとする市場環境の変化により、日本の柑橘消費は徐々に変化していきます。海外産柑橘との競合や、より甘味の強い品種への需要の高まりを背景に、甘夏の栽培面積は次第に減少していきました。

近年では、より高糖度で食べやすい中晩柑への改植が進み、甘夏の作付けはさらに減少傾向にあります。しかし現在の不知火(デコポン)などの産地の多くは、もともと甘夏を栽培してきた園地であり、その基盤の上に成り立っています。甘夏によって築かれた園地環境と栽培技術は、次世代の柑橘へと確かに受け継がれています。

甘夏は、時代の主役からは少し退いたものの、芦北地域の柑橘文化を形づくった重要な存在です。紅甘夏を含め、その爽やかな酸味と奥行きのある味わいは、今もなお多くの人に親しまれ続けています。

はるか

はるか5kg(熊本県産)(左上)
はるか5kg(熊本県産)(右上)
はるか5kg(熊本県産)(下)
はるか10kg(熊本県産)(上)
はるか10kg(熊本県産)(下)

はるかは、明るい黄色の果皮とやわらかな甘さが特徴の中晩柑です。見た目はレモンのように黄色く、酸味が強そうに見えますが、実際は酸味が穏やかで、やさしい甘さが広がる食べやすい柑橘です。果肉は淡い色合いで、果汁が多く、口当たりはまろやか。後味はすっきりとしており、春先に楽しむのにふさわしい味わいを持っています。

はるかは、日向夏(ひゅうがなつ)の自然交雑実生から生まれた品種とされています。日向夏の血を引くため、じょうのう膜が比較的やわらかく、袋ごと食べやすいのも特徴です。酸味が控えめで、甘味が素直に感じられるため、幅広い世代に親しまれています。

熊本県でも温州みかん産地の熊本市西区河内町・玉名市天水町・宇城市三角町を中心に栽培され、冬から春にかけて出荷されます。果皮はやや厚みがありますが、手でむきやすく、内側の白いアルベド(わた)部分も甘味を含むため、日向夏のように白い部分を残して食べる楽しみ方もできます。

見た目の印象と味わいのギャップが魅力のはるかは、春の柑橘の中でもやさしさを感じさせる存在です。甘さと軽やかさを求める方に適した、穏やかな味わいの柑橘といえるでしょう。

ポンカン

ポンカン10kg(熊本県産)(左上)
熊本ポンカン10kg(熊本県産)(右)
ポンカン化粧箱・小川柑橘組合・JA熊本うき(宇城市小川町産)(左下)
肥後ポンカン5kg(熊本県産)(左上)
くまもとポンカン10kg(熊本県産)(右上)
ぽんかん5kg(熊本県産)(右下)

ポンカンは、濃厚な甘みと芳醇な香りを持つミカン類の柑橘です。果皮はやや厚みがありますが手でむきやすく、果肉はやわらかくジューシー。口に入れた瞬間に広がる南国系特有の甘い香りとコクのある味わいが魅力です。酸味は穏やかで、糖度が高く、冬の柑橘として高い人気を誇ります。

原産はインドとされ、日本へは明治期に導入されました。温暖な気候を好む品種で、九州や四国を中心に広がりました。熊本県では、とくに天草地方が栽培の中心地となっています。不知火海(八代海)に囲まれた温暖な気候と、海に面した斜面の園地条件が、ポンカンの甘みと香りを引き出します。天草地方以外では熊本市西区河内町や玉名市天水町、宇城市三角町といった温州みかんの産地でも栽培されています。

果実はやや扁平で、濃い橙色に色づきます。房はしっかりとしており、種が入ることもありますが、その分味わいは濃く、香りも豊かです。収穫後に適度な貯蔵を行うことで酸味が落ち着き、甘みが一層引き立ちます。

また、ポンカンは育種親としても重要な存在です。不知火(しらぬひ)をはじめとする多くのタンゴール系品種(みかん類とオレンジ類を掛け合わせたもの)にその血が受け継がれています。現在の熊本を代表する中晩柑の系譜にも、ポンカンの存在は欠かせません。

天草の温暖な気候に育まれたポンカンは、素直で濃厚な甘みと香りを楽しめる柑橘です。派手さはなくとも、確かな存在感を持つ冬の主役のひとつといえるでしょう。

ザボン

※在来種のザボンの他にチャンドラポメロ(ファーストクイーン)を含む広義のザボン

ざぼん5玉入6kg(八代市・氷川町産)(左上)
ざぼん6kg(八代市・氷川町産)(左下)
ざぼん4玉入6kg(八代市・氷川町産)(右下)
ざぼん(八代市・氷川町産)

八代地域の在来種ザボンは、熊本県八代地域を中心に古くから栽培されてきた大型柑橘です。晩白柚が普及する以前はザボンの栽培が盛んであり、地域を代表する柑橘の一つでした。晩白柚の一般的なLサイズが1玉約1.5kg前後であるのに対し、八代のザボンは1玉1kg前後とやや小ぶりではあるものの、柑橘としては十分に大型です。果肉には赤肉系と白肉系があり、流通段階では明確に区別されないことも少なくありませんが、どちらも自然でやわらかな甘味を持つのが特徴です。派手さよりも素直な甘さがあり、八代の風土に根ざした味わいを持つ柑橘といえます。

チャンドラポメロ(国内では「ファーストクイーン」と呼ばれることもあります)は、晩白柚栽培が八代で本格化した頃、受粉樹として導入された経緯を持つ品種です。その意味で、晩白柚栽培の広がりとともに地域に定着した副次的存在でもあります。

チャンドラポメロはアメリカ・カリフォルニアで育成された大型ポメロ(文旦)系品種であり、育種記録によれば交配親は「Siamese Sweet」と「Siamese Pink」とされています。いずれも学術的には Citrus maxima、すなわち文旦(ポメロ)に分類される系統です。「Siamese」という名称はシャム、すなわち現在のタイ王国に由来します。したがって学術的には、チャンドラポメロは文旦同士の交配によって生まれた改良品種と位置づけられます。

チャンドラポメロの果肉は一般に濃いピンクから赤系の色調が知られていますが、実際にはオレンジ系のやや淡い色合いのものも存在します。また、種の量や果肉色の発現には個体差があり、栽培環境や年ごとの条件によっても変化します。いずれも果汁が豊富で、従来の文旦より酸味が穏やかで甘味が強く、ジューシーで食べやすい食味を備えています。

日本語のウェブサイトや苗木販売資料などでは、「文旦(ザボン)とグレープフルーツの交雑品種」と説明されることがありますが、これは特徴をわかりやすく伝えるための簡略化に近い表現です。チャンドラの赤系果肉や爽やかな風味がグレープフルーツを連想させるため、そのような説明が広まったと考えられます。さらに、グレープフルーツ自体がポメロ(文旦)とスイートオレンジの自然交雑によって成立した品種群であることも、両者の混同を助長しています。グレープフルーツの学名は Citrus × paradisi とされ、「×」は交雑由来であることを示しています。

しかし、公式育種資料(University of California, Riverside – Citrus Variety Collection)においてチャンドラポメロの交配親として記録されているのはポメロ系統であり、直接グレープフルーツが交配されたという記録はありません。実際に「文旦 × グレープフルーツ」の交雑として確立している品種には Oroblanco(オロブランコ)や Melogold(メロゴールド)などがありますが、チャンドラポメロはそれらとは系統が異なります。

したがって、チャンドラポメロは文旦系統の改良品種であり、赤系からオレンジ系までの果肉色の幅を持ち、食味の印象からグレープフルーツと混同されることがある品種と理解するのが妥当です。八代在来ザボンと同じ文旦系に属しながら、より華やかな外観と現代的な食味を備えた広義のザボンとして位置づけることができます。

日本フルーツ株式会社では、八代地域で生産された晩白柚を除く大玉のポメロ(文旦類)、すなわち在来種ザボンおよびチャンドラポメロを総称して「八代ザボン」として取り扱っています。専用の八代ザボン箱にて全国へ発送しており、商品の位置づけとしては高級贈答用の晩白柚に対し、より身近に楽しめる大型柑橘という立ち位置になります。外観に多少の傷や色むらがあるものも含め、価格を抑えながら八代の大型ポメロの魅力を伝える商品として展開しています。