飽託地域
飽託郡(ほうたくぐん)は、かつて熊本県に存在した郡であり、1889年(明治22年)の町村制施行により飽田(あきた)郡・託麻(たくま)郡の区域をもって発足しました。その後、徐々に県都熊本市への編入が進み、2010年には完全に熊本市に編入され消滅しました。現在でも「飽託地域」として、歴史的な地域名が地元で親しまれています。


飽託地域の市区町村・中心都市
- 飽託郡
- 熊本市中央区
- 熊本市西区
- 熊本市北区(植木町を除く)
- 熊本市南区(城南町・富合町を除く)
- 行政の中心:熊本市中央区(熊本県庁所在地)
- 経済の中心:熊本市中央区
- 交通拠点
- 主要駅:熊本駅(熊本市西区)
- バス停留所:桜町バスターミナル(熊本市中央区)
- 高速道路:
- 九州自動車道:熊本インターチェンジ(熊本市東区)
- 港湾:熊本港(熊本市西区)
熊本市中央区

(国土交通省 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスの空中写真を基に作成)


熊本市中央区は、熊本県の政治・経済・文化の中枢を担うエリアであり、熊本市の5つの行政区の中でも特に機能が集約された都市の核として発展を続けています。面積は約25.45平方キロメートルと比較的コンパクトでありながら、人口は約18万6千人(2025年4月1日時点の推計)にのぼり、熊本市内でも最も人口密度の高い区の一つです。四方を東区・西区・南区・北区に囲まれており、他市町村とは接していないものの、市全体の心臓部として都市活動を牽引しています。古くから城下町として栄えた地域であり、熊本城を中心に発展してきた経緯があるため、現在でも上通・下通といったアーケード街や桜町バスターミナルをはじめとする商業・交通の中心機能が集積しています。区の西部には熊本城が堂々と構え、歴史の風格を今に伝えながら、周囲には官公庁やオフィス、商業施設が密集し、県内外から多くの来訪者が行き交う都市空間を形成しています。
また、東部には熊本県庁や水前寺成趣園、江津湖といった行政・文化・自然の拠点が並び、区全体において多様な都市機能と住環境がバランスよく配置されていることが中央区の大きな特徴です。市電やバスなど公共交通のネットワークも密に張り巡らされており、JR豊肥本線の駅や熊本市電の主要停留所をはじめ、市内外を結ぶ交通のハブである桜町バスターミナルが区内に位置するなど、通勤・通学・観光において極めて高い利便性を誇ります。教育面では、熊本大学をはじめとした複数の大学や高等学校が立地しており、知の集積地としての役割も果たしています。特に熊本大学の複数キャンパス(黒髪・大江・本荘・九品寺)や熊本学園大学、尚絅大学などが市内に点在し、地域の学術・医療・文化を支える人材育成の拠点として重要な存在となっています。
医療機関や図書館、消防署といった公共インフラも整備されており、都市生活を安心して営むための土台がしっかりと築かれています。区名の「中央区」は、2010年に市民公募によって選ばれたもので、応募案の中で過半数の支持を得て採用された名称であり、その名の通り熊本市の「中央」に位置し、市民にとってもわかりやすく親しみやすい区名として定着しています。区内には行政機関も多数立地しており、熊本市役所本庁舎(中央区役所併設)や熊本地方裁判所、熊本地方検察庁、法務局、労働基準監督署などの公的施設が軒を連ね、熊本市全体の行政機能が凝縮された場所となっています。さらに、肥後銀行や熊本銀行をはじめとした地場金融機関、放送局や新聞社などのメディア機関も集中しており、経済・情報発信の中心拠点としても機能しています。
文化・観光資源としては、熊本城や水前寺成趣園をはじめ、夏目漱石の旧居や熊本県立美術館、熊本市現代美術館などがあり、歴史・芸術・自然のすべてがコンパクトに楽しめる都市空間が形成されています。また、藤崎八幡宮秋季例大祭や火の国まつりといった伝統行事も盛んで、地域の祭りや文化活動が市民の生活の中に根づいています。こうした要素が融合する中央区は、行政、経済、文化、交通のすべてが集中する熊本市の中心地として、熊本県全体の発展を支える不可欠な地域です。住むにも、働くにも、訪れるにも理想的なロケーションとして、多くの人々から高い評価を得ており、今後も熊本市の発展を牽引する中核エリアとして重要性を増していくことが期待されています。
熊本市西区

(国土交通省 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスの空中写真を基に作成)

(国土交通省 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスの空中写真を基に作成)

熊本市西区は、熊本県熊本市の西側に広がる地域で、自然の豊かさと歴史の深さが共存する落ち着いたエリアです。政令指定都市としての熊本市が2012年に区制を導入した際に誕生し、旧・池田村や花園村、島崎村、小島町、河内町など、かつての町村を包括する形で構成されています。面積は約89平方キロメートルと広大で、金峰山(きんぽうざん)や花岡山をはじめとした山々に囲まれ、有明海に面する海岸部には熊本港を擁するなど、山・川・海のすべてを抱える地形的特徴を持っています。区内には井芹川、坪井川、白川といった主要な河川も流れ、自然とともにある暮らしが色濃く根付いています。
人口は約9万人(2025年4月時点推計)で、熊本市の中でも比較的ゆとりある住環境が整っています。都市中心部の中央区に隣接しながらも、西区は歴史的な町並みと豊かな自然を残す地域として、観光・定住の双方において魅力的な選択肢となっています。熊本港からは対岸の長崎県島原市へ向かうフェリーも運航されており、陸路だけでなく海路も活用できる交通の要衝です。
教育・文化の面では、私立の崇城大学を中心に、熊本西高校や千原台高校、文徳学園などの学校があり、地域の教育基盤を支えています。また、北岡神社、本妙寺、霊巌洞といった歴史ある寺社や、肥後の三賢人を称える三賢堂、島田美術館など、地元の歴史や文化に触れられる施設も充実しています。とくに霊巌洞は、剣豪・宮本武蔵が晩年を過ごし、名著『五輪書』を著したと伝えられる場所として全国的にも知られています。
行政機関も多数立地しており、西区役所のほかに河内出張所や芳野分室などが住民サービスの拠点として機能しています。さらに、熊本地方合同庁舎には気象台、財務局、労働局、農政局などの国家機関が集まり、行政面でも熊本市西部の中心的な役割を果たしています。熊本朝日放送などのメディア企業や、九州フィナンシャルグループの拠点も立地し、経済・情報面でも一定の影響力を持っています。
交通の利便性も高く、九州新幹線・JR鹿児島本線や豊肥本線が通る熊本駅・上熊本駅をはじめ、熊本市電の田崎橋停留所や熊本駅前停留所など、鉄道・路面電車・バスが効率よく市内外を結んでいます。自動車移動にも適しており、国道501号線や県道1号など幹線道路が整備され、物流や観光客の流れもスムーズです。熊本港の再整備も進められており、海上輸送や観光船の発着拠点としての役割も強まりつつあります。
西区では都市的なインフラだけでなく、河内地区などでは果樹栽培を中心とした農業も根強く残っており、地域内で都市と農村の両側面が共存しています。柑橘類やぶどうなどの生産も盛んで、直売所や地元イベントなどでは地元の恵みを楽しむことができます。
このように、熊本市西区は都市としての利便性と、自然・歴史・文化の豊かさが融合する魅力的な地域です。中心市街地に近接しながらも、喧騒からは一歩離れた静かな生活環境を提供しており、観光、居住、教育、行政、産業と多方面において熊本市の発展を支える存在となっています。
熊本市東区

(国土交通省 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスの空中写真を基に作成)

(国土交通省 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスの空中写真を基に作成)

熊本市東区は、熊本市を構成する5つの行政区の中で最も人口が多く、約18万9千人(2025年4月1日時点推計)を擁する活気ある都市圏です。熊本市の東部に広がり、面積は約50.19平方キロメートル。中央区・北区・南区と市内の他区に接するだけでなく、菊陽町・益城町・嘉島町といった郊外自治体とも隣接し、住宅地・商業地・自然地帯が程よく融合した居住性の高い地域として成長を遂げてきました。もともと東区は画図村、健軍村、秋津村、託麻村の各地域を母体とし、1970年までにすべて熊本市に編入された背景を持ち、他の区と比べても一足早く都市化が進んだエリアでもあります。名称の「東区」は、2010年に市民からの公募を経て決定されたもので、地理的にも市の東側に位置する分かりやすい名称として定着しています。地勢的には、白川や加勢川、江津湖といった水辺空間に恵まれ、さらに北部には神園山・小山山・戸島山などの小高い丘陵が点在しており、都市にありながらも自然とのふれあいが身近に感じられる環境が特徴です。
交通の利便性も高く、熊本市電の健軍線やJR豊肥本線の東海学園前駅、さらに九州自動車道や熊本東バイパス、浜線バイパスなどの幹線道路が縦横に走ることから、自動車・公共交通ともにアクセス性に優れています。また、桜町バスターミナルと区内各地を結ぶ路線バスや、地域住民の足として機能する「ゆうゆうバス」などの地域交通も整備されており、高齢者や子育て世代にも暮らしやすい交通環境が整っています。教育施設も豊富で、熊本県立大学や東海大学(熊本キャンパス)をはじめ、高校・中学・小学校、さらには幼保連携型認定こども園まで幅広く展開されており、教育水準の高さと選択肢の豊富さは子育て世帯にとって大きな魅力です。特に託麻・長嶺・桜木・秋津エリアには新興住宅地とともに学校や医療施設が集積しており、都市的な整備が進んでいます。
医療においても、熊本市民病院や熊本赤十字病院などの中核医療機関があり、日常の医療から高度な医療サービスまで安心して受けられる体制が整っています。さらに、東区には健軍駐屯地や熊本駐屯地が置かれており、自衛隊の施設も複数存在することから、国防・防災面での重要な拠点ともなっています。加えて、国の出先機関である九州運輸局熊本支局や河川国道事務所、防衛支局なども立地しており、行政機能も一部担っています。区の南西部には市民憩いの場として親しまれる江津湖が広がり、その周辺には熊本市動植物園や庄口公園、熊本県民総合運動公園といった文化・スポーツ・レクリエーション施設が集まっており、休日には多くの市民で賑わいます。
また、健軍神社を中心に形成された健軍商店街(ピアクレス)や、ゆめタウンサンピアン、シュロアモール長嶺などの大型商業施設も点在しており、ショッピングや外食の面でも非常に充実しています。こうした商業と自然、教育と医療、行政と交通がバランスよく融合した都市空間として、東区は熊本市内でも特に生活の質が高いエリアとして人気を集めています。住宅地としての成熟とともに、郊外からの流入人口も受け入れる都市の拡張ゾーンとしての役割も担っており、今後も持続的な発展が期待される地域です。熊本市東区は、生活拠点としての利便性と環境の豊かさを兼ね備えた、まさに「都市型郊外生活」の理想形といえるでしょう。
その他(北区・南区など)

(国土交通省 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスの空中写真を基に作成)

(国土交通省 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスの空中写真を基に作成)

(国土交通省 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスの空中写真を基に作成)
熊本市は政令指定都市として5つの行政区(中央区・東区・西区・北区・南区)に分かれていますが、それぞれの区は旧来の郡部や地理的文化圏に基づく地域性を持っています。本編ではこの地域性に即して区を紹介するため、中央区・東区・西区は「飽託地域」として一括し、北区は「鹿本地域」、南区は「宇城地域」にそれぞれ分類し、それぞれの章で解説を行います。
特に北区に関しては、旧植木町を中心とするエリアが山鹿市と連携の深い鹿本地域(鹿本郡を前身とする地域圏)に属しており、他の北区内の区域(旧清水村・龍田村など飽託地域に由来する地区)とは文化的・地理的背景が異なります。そのため、北区全体を飽託地域として紹介するのではなく、北区は鹿本地域の文脈で紹介します。
一方、南区についても旧城南町や旧富合町などは宇城市や宇土市と連携の深い宇城地域(下益城郡・宇土郡を前身とする地域圏)に属しており、南区は「宇城地域」の文脈で紹介します。
飽託地域のフルーツ
飽託地域は、温暖な気候と肥沃な土地に恵まれ、果物栽培が盛んな地域です。特にフルーツ栽培は、多様な種類と高い品質で知られています。代表的な果物としては、甘みが豊かでみずみずしいメロン、爽やかな酸味と甘味のバランスが絶妙なスイカ、香り高くジューシーな梨、そして地元特産のイチゴやみかんなどがあります。
- 温州みかん
- ハウスみかん
- 梨
- 桃
- 大玉すいか
- 小玉すいか
- アールスメロン
※飽託地域に限ればスイカやメロンは希少なものとなります。熊本市内産まで範囲を広げた場合は植木・富合・城南地区産の出荷も可能であり、人気の肥後グリーンメロンや豊富なスイカ等を取り扱い可能になります。